法定地上権は「暗記」するから解けないのです。

競売、更地、一番抵当権……難解な用語に惑わされないでください。これは「競売によって土地と建物の持ち主がバラバラになったとき、建物が取り壊されるのを防ぐため、法律が勝手に借地権をセットしてくれる」というだけのルールです。

4つの要件という「鍵」さえ持っていれば、どんな難問のドアも一瞬で開きます。

なぜ「勝手に」地上権が発生するのか?(法の趣旨)

結論、建物を壊すのは「社会的な大損失」だからです。

土地が競売にかけられ、土地と建物の持ち主がバラバラになったとき、建物に「敷地を利用する権利」がなければ、その建物は不法占拠となり、取り壊さなければなりません。

しかし、まだ使える立派な建物を壊すのは、所有者にとっても社会にとっても大きな損失(マイナス)です。そこで民法は、「社会経済的利益の保護」のために、当事者の意思に関係なく「地上権があったことにする」という強引な処理を行います。これが「法定」地上権の正体です。

「誰かが得をするため」ではなく、「社会の無駄を省くため」にあるルールだと理解してください。この視点があれば、要件の判別で迷うことはなくなります。

4つの要件——設定時の「スナップショット」を撮れ

試験会場で迷ったら、抵当権を設定した「その瞬間」の現場を想像して、以下の4枚の写真をチェックするだけです。このパズルが揃った瞬間、権利が生まれます。

  1. 土地の上に建物があること(更地はアウト)
  2. 土地と建物が「同一人物」の所有であること
  3. 土地または建物に「抵当権」が設定されたこと
  4. 競売の結果、所有者がバラバラになったこと

特に重要なのは「1」と「2」です。「設定時に建物があったか?」「同じ人のものだったか?」。このスナップショットさえ撮れれば、答えは自動的に出ます。後から建物を建てたり、後から持ち主が変わったりしても、設定時の写真がすべてを決定します。

民法388条の法定地上権の成立要件4つの図解

【豆知識】試験委員が仕掛ける「一番抵当権」の罠

不法行為と同様、ここでも試験委員はあなたの「趣旨への理解」を試してきます。宅建試験で最も正答率が下がるのがこのパターンです。

よくある罠:
「一番抵当権設定時には更地だったが、その後に建物が建ち、二番抵当権設定時には建物があった。さて、法定地上権は成立するか?」

暗記勢は「建物があるから成立!」と飛びつきますが、正解は「不成立」です。なぜか? それは「一番抵当権者の期待」を守るためです。

一番抵当権者は「更地(建物がない、価値の高い土地)」を担保にお金を貸しました。後から建物を建てて法定地上権を認めてしまうと、土地の価値が暴落し、一番抵当権者が大損をします。

「先に権利を確保した人を裏切らない(取引の安全)」というリーガルマインドがあれば、暗記不要で10秒で解ける問題です。

まとめ:法定地上権は「公平」の調整弁

法定地上権は、建物を守りたい「社会の要請」と、担保価値を守りたい「債権者の権利」を天秤にかけ、最も公平なラインで線を引いた制度です。複雑に見える判例も、すべてはこの天秤のバランス調整に過ぎません。

次に読むべき記事:
権利関係の山を越えたら、次は「得点源」である宅建業法へ。35条(重要事項説明)を趣旨から攻略しましょう。